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私の寒蘭の花の見方

投稿者:小松

読者数:4360
2003/05/16(Fri)03:33
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【私の寒蘭の花の見方】   岡村豊吉(元土佐香南愛蘭会顧問)

〜土佐香南愛蘭会会誌17号(平成元年)〜

 寒蘭の花の見方といっても、中国春蘭や日本春蘭のように、別にこうだと統一された見方があるわけではない。寒蘭の花は姿、形が多様で、色調も変化に富んでいて、人それぞれに見方も違い、考え方も異なるであろう。ある人は自分の好みの花を最良の花と見、またある人は高価な花を優秀花といい、また中には希少の花を最高と考えるなど様々である。

 さらに、地域によっては従来からの慣行等により、幾分相違があるのではないかと思う。たとえば紀州の人の見方と九州の人の見方、同じ九州でも日向と薩摩、その他のところで多少相違するように思う。

 しかし人により、また地域によって若干の見方、考え方に違いはあっても、それは見る人の好みや感覚の違いと言うことではないだろうか。「それでは寒蘭に対する鋭い観察眼を養うにはどうすればよいだろうか。」と問われれば、「花の基本的なことをよく理解することだ。」と言いたい。基本的なことをよく理解することによって、寒蘭の花はどのような花であるべきか、また、特定の花は斯くあるべきだ、というようなことを知ることができるわけである。

 寒蘭の花を観察するに際しては、まずその花の長所、短所を見つけることが大切で、これをただ漫然と花を眺めていては簡単に見つかるものではない。蘭花の観賞の場合、全般に共通している基本的な基準(約束ごと)があるが、寒蘭の場合はさらに一定の基準を定めて、この基準と比較して、花色から花型、唇弁、花茎、更に葉などと観察してゆくとわかりやすい。

 そこで、私の蘭花観察の基準を参考までにご紹介してみよう。

1 姿、形が整っていること。

2 色は美しくて、冴えの良いこと。

3 調和の良いこと。

4 気品のあること。

5 魅力のあること。

 以上の条件をよく兼ね備えている花ほど、優れた花と言うことができると思う。そこで、これらのことについて少し具体的に解説してみることとする。

1 姿、形が整っていること。

 @姿、形に異常なところがなく、端正である。

 A花弁は広すぎず、またあまり狭すぎもせず、基部を絞って中央部を広くし、弁先へ徐々に狭めて素直に伸ばす。

 B主弁は前方へやや曲線を描いて、中立ちか、うつむき加減で、後方へ反ったり捻れたりしない。

 C副弁は左右へ水平に一文字か、三角型、またはその中間の咲き方がよく、三角型よりも更に弁先を落とすと花に締まりを失って見苦しくなる。

 D弁先は素直に伸ばしていることで、わずかに内側に抱えているのは、花によっては柔らかみを覚え、ゆとりを感じさせて好ましいが、あまり深く抱えると花の姿が崩れる。

 E一文字咲よりも更に副弁の先を上方にあげると飛肩咲、力士が四股を踏んだ形の踏ん張り咲、副弁を後方へ反らすと反転咲で、いづれも好ましい咲き方ではない。

 F内弁は前方へ伸ばして、行儀良く先弁を閉じているのが最も良い。弁先を前方で交差させているのは燕尾型で、わずかに交差しているのは好ましいが、あまり深く交差させて内弁の内側に隙間ができると格好が悪くなる。

 Gまた、内弁を開いて高くあげ、腮部まで露出させては品位が悪く見苦しくなる。

 H舌は大きめがよく、軽く捲いて中程を広く、丸みを持つと花が豊かで福よかになり、堅く捲くと舌が小さく貧弱になる。

 I舌を巻かずに前方へ垂れ下げ、また左右へ流れたり、捻れるなどすると格好が悪くなる。

 J子房は細くて長いめが良く、花を正面か、わずかにうつむき加減に支えて、花茎から花を離していると花が雄大に見える。子房が太くて短いと、花が花茎に密接して調 和が悪く、見栄えがしない。

 K花茎もなるべく細く、素直に伸びているのがよいが、あまり伸びすぎて花茎の上部に花が密集して咲くと、葉との間隔が開いて調和が悪い。これに反して花茎が短すぎると、葉の間に花が隠れ、藪花になって、花の価値をなくしてしまう。

 

2 色は美しく冴えの良いこと。

 花の色は多彩で変化もあるが、何色によらずよく冴えて艶が良く、美しいことが花の命である

 一部例外はあるが、二色以上混合した色よりも単色の方が透明度がよく、華やかな美しさをよくあらわす。

 サラサ花は別として、花弁は鮮明なベタ一色が好ましく、他色を交えたり、またはかすれた斑点などがあっては、せっかくの花の美観をそこなう。

3 調和のよいこと

 花は全体の調和がよく整っていることが大切で、調和が乱れると花に締まりを失い、だらしない花になる。主弁と副弁、内弁、唇弁、花茎と葉姿など、全ての調和が肝要である。

 これら全ての調和が整うと、始めて寒蘭特有の美しさがかもし出され、最高の見どころと言うことができよう。

4 気品のあること。

 蘭の花は品位が大切で、おかし難い気品、上品さが望まれる。いかほど姿、形がよくても気品にかけ、品位がなくては優れた花とは言い難い。寒蘭の花は他の草花とは異なって、ことのほか品位が尊ばれる。

5 魅力のあること。

 人の心を引きつけて、夢中にするような魅力が欲しい。このような魅力のない花は、栽培の価値はないものと思われる。

次に、色別に各々その花の持つ特色の見方について述べてみよう。

1 赤花

 赤花は俗に男花と言われて、姿、形が端正で男性的な風格を備えていることが望まれる。まず花形は一文字が理想で、落肩咲か、三角咲くらいまでで、よく整い、乱れたところのないこと。

 外弁の色はベタ一色がよく、弁先が淡れたり、かすれた斑点などのないもの。内弁は、外弁と同色か、これに近い色合い程よく、緑色など他色を交えると見劣りがする。

 舌は淡緑か、淡い黄緑の白色に近い色合いほど麗しく、腮部の色調、舌点などが鮮やかな程、華やかに花を引き立てる。

 花軸も濁りのない共色が望ましく、また軸が太いと花付きも多くなり、花間も詰みがちになりやすく、なるべく細軸でありたい。

 赤花は色の多彩なことでは寒蘭の中では随一で、鳶や赤、紅、橙色など、またこれらの色が互いに入り交じり、あるいは紫を交え、さらには濃淡などと変化が多く、何色かの判定に迷うことが多い。

2 白花

 赤花の男花に対して、白花は女花と言うことができよう。従って角張った一文字咲などよりも、むしろしなやかな落肩咲や三角咲などが相応しく、優雅で麗しく、清爽で女性的な淑やかさが尊ばれる。

 花弁は冴えがよく上品さがあり、内弁は慎ましく弁先をよく揃えていることが望ましく、万歳咲などは見苦しい。清楚で汚れがなく、豊でふくよかな舌は花をよく引き立てる。花軸も垢抜けのした細軸で素直に伸び、花間も広く、ゆとりを保ちたい。

 白花には緑白素心と乳白素心とがあり、緑白素心とは緑花(青花)系の白花で普通一般に白花と言われている花。乳白素心とは黄花系(金鵄系)の白花で豊雪、素月の花などである。

素心花をさらに次のように分類している

 @白胎素心

 花弁及び舌面が緑白で、まったく他色を交えていないもの。

 A緑胎素心

 内外弁及び舌面にやや緑味のあるもの。

 B黄胎素心

 内外弁及び舌面にやや黄味のあるもの。

 C桃腮素

 唇弁の咽頭部(腮部)を淡桃に染めているもの。

 D刺毛素

 舌面にやや染みのあるもの。(白鳳の花のように)

3 桃花

 桃花の代表花は西谷産の桃花であろう。濃い桃色から淡桃色、紅や紫を交えた色などがあるが、花弁は冴えのよいことで、弁先が淡れたり、または黄色などの他色を交えると見劣りがする。白舌はよく冴えて麗しく、子房、花茎も濁りのない優れた色調でありたい。

 

4 黄花

 黄花も桃花と同様、西谷産の黄花より優れた花を見受けない。純度のよい色ほど優れていて、花弁に褐色などの筋を入れない花が優れている。

 白舌は鮮やかで、紅や桃色の点は一段と花を美しく引き立てる。

 子房、花茎にも紅や桃、黄色などあって、それぞれ趣を異にし、また花茎を濃い緑色に染めているものなどあって、愛好者の目を楽しませてくれる。

 

5 黄白花(白金鵄)

 西谷産の黄花の中の変わり花で、常時乳白色の花を咲かせる品種である。黄花と同様、花弁に褐色などの筋を入れない花が優れている。

 

6 サラサ花(群色花)

 サラサ花には紅サラサ、桃サラサ、黄サラサ、青サラサがあって、それぞれ異なった特色を持ち、微妙な色調の取り合わせは、単色花には見ることのできない渋さと華やかさの美をかもし出す。

 紅サラサは淡い緑地の花弁に紅色の筋を入れ、桃サラサは淡い黄緑の花弁に淡桃の筋を入れている。また黄サラサは淡い黄緑の花弁に黄筋を入れ、青サラサは淡緑の花弁に緑褐色の筋を入れている。いずれのサラサにも共通して求められるのは、その色彩度の透明度のよいことである。

7 青花(緑花)

 一般に青寒蘭といわれている一群で、花弁は濃い緑色から淡緑まで多彩である。最近これらの青花の中の優れた花が見直されて、静かなブームを呼んでいる。腮部の無染の花(素舌)、舌無点の花などに人気が集中している。

8 青々花

 花弁、子房、花茎が共に淡緑色、または淡い黄緑色に冴えて濁りのないのがこの花の条件で、腮部をやや染めたり、舌に点のある花である。これらのうちでも、主副弁に色線のないものが良品とされている。また天弁に折り鶴芸をあらわす花などもある。以前は、この折り鶴芸がよろこばれたが、最近ではこの傾向もやや薄らぎ、好む人、好まない人など様々である。

 この青々花は出現が比較的少なく、今なお愛好者の人気を集めて衆望貴品の地位を保っている

 寒蘭の花を観賞するに際しては、ただ花のみにとらわれることなく、葉姿との調和の善し悪しを観察することもまた大切なことである。調和のよい花は華やかに花が映え、調和が悪いと何となく見栄えのしないものである。

 葉は緑が濃く、光沢のよいほど美しく、葉先が枯れたり、ちぎれているなどは見苦しく、常に清潔完全で、素直な姿でありたいものである。

 葉には、立ち葉、中立ち葉、中垂れ葉などがある。立ち葉に咲く花は花軸がよほど伸張しないと、花が葉の間に隠れて咲いて藪咲きになるきらいがある。また垂れ葉は優雅な曲線を描いて美しく、見飽きしない魅力があるが、往々にして花軸が葉上に伸びすぎて調和を失うことがある。

 そこで花と葉の調和のよい範囲はといえば、中立ち葉か、中垂れ葉で、その最も調和のよい姿は、葉の上辺付近に第一花を咲かせ、やや広い花間を保って四、五輪の花を咲かせた花軸の伸びがバランスがとれて理想的である。

 

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