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病虫害と物理的障害

A:病気 蘭の病気は既にフィトフトラ病菌(Phytophthora spp.)ピシウム病菌(Pythium spp.)リゾクトニア病菌(Rhizoctonia spp.)など数種類が知られているが、近年、原因菌が判らない新しい病気も報告されている。以下に主な病気を掲載する。

葉枯れ病 (根腐病を参照)
症状 
葉先から枯込むが殆ど斑紋は出ず、葉身の1/3程度で止まる場合が多い。
原因対策 生理的な障害との区別が難しく、既に根が腐敗している事が多い。多くの病状が葉先に現れるが、葉先は環境が過酷なため最もストレスが掛かる為であると思われる。原因がバルブなど別の部位にある事も多いので、植替え時に全体を見て判断する必要がある。

炭疽病 コレトトリカム菌 Colletotrichum acutatum
症状 葉先から斑紋状に枯込み、葉身の1/3程度で止まる場合が多い。葉を切る人が多いが、原因菌は土壌にも感染している場合が多いので効果が上がらない。古葉やストレスを受けた株に発生する事が多い。
原因対策 暖かくなると分生子が風や水によって広がり感染する。発病させる力は弱く、ストレスで弱った植物のみを侵す。
有効薬剤 オーソサイド水和剤、ジマンダイセン水和剤、ベンレート水和剤など。

黒点病 原因菌不明 
症状 
葉先に限らず葉の所々に黒色の不規則な点が入る。見苦しいが重篤な状態にはならない。
原因対策 予防のため定期的に薬剤を散布する。
有効薬剤 オーソサイド水和剤、オキシボルドウ、オキシラン水和剤、オキシンドー水和剤、キノンドー水和剤、キャプタン水和剤80、サンボルドー、ジマンダイセン水和剤、ストロビードライフロアブル、スパットサイド水和剤、スペックス水和剤、ダイパワー水和剤、ダイファー水和剤、ダイボルト水和剤、ダコニールなど

軟腐病(ズボ抜け、スッポ抜け) エルビニア細菌 Erwinia carotovora subsp
症状 主に新芽の止め葉の付け根付近から黄変し、葉が抜ける。
原因対策 病原の大半は糸状菌がだが軟腐病の原因は「細菌」である。
有効薬剤 銅水和剤、キノンドー水和剤、ストマイ液剤、マイシンS、アグリマイシン水和剤など。

黒腐病(黒腐れ) フザリウム菌 Fusarium oxysporum
症状 新芽の外側の袴が黒変する。また、成長したバルブの表面に黒斑を生じ、ひどくなると新芽が出なくなる。未完熟の有機肥料が表土やバルブの周辺に溜まり、病原菌が生息する環境が発生する。特に窒素肥料は病状を進行させる。病原菌は根やバルブ下部から侵入し病斑はバルブ表面だけではなく、バルブ内に深く進入していて根治困難である。過湿な環境の場合は苗黒腐病 (ピシウム菌 Pythium.ultimum Trow)の可能性もある。
原因対策 フザリウムは好気性土壌菌で、多くは乾燥した表面近くの土に生息するものと考えられるので、植込み材料を新しいものに替え再使用しない。鉢底からの水や胞子の飛散により伝染するので棚や周囲も消毒を行う。植替え時に健全な部分が露出するまでできるだけ黒変部分を除去し、浸透性の強い薬液に数時間浸漬する。土壌中で放線菌が顕著に増殖するとフザリウム菌やリゾクトニア菌などの生育は圧迫される。
有効薬剤 スポルタック、アミスター20、キャプタン水和剤を順に使用する。

灰色カビ病 ボトリチス菌 Botrytis
症状 主に冬季に発生し、春先に急に葉が黄変落葉する。低温多湿環境下で発生する。発見が早い場合はバック木は助かるが、遅れると一株が全滅する。
原因対策 晩秋の頃にロブラール水和剤の1000〜1500倍液を株元に潅注。
有効薬剤 ロブラール水和剤

白絹病  白絹病菌 Corticium rolfsii 発育適温30℃前後.多湿を好む土壌生息菌。
症状
 根および株元に白色の菌糸が付着する。高温多湿状態で地際部から発病し、根、茎が水浸状に軟化腐敗する。菌核を作り越冬するので根治する事は困難である。湿潤で日当たりの悪い環境で多発するため、有機肥料を中止し、環境の改善に努める。
原因 環境を改善してできるだけ乾燥した状態を維持する。
有効薬剤 ダコニール、オーソサイド水和剤、トップジンM、ロブラール水和剤、モンカット剤

立枯れ病 病気の進行が早い事から、細菌病である可能性が高い。フィトフトラ(疫病)菌が原因菌で二次的にリゾクトニア菌が進入と言う可能性もあるが不明。
症状
 株元から急速に枯上がり、多くの場合一週間程度で一株が全滅する。春から夏にかけて発生する事が多い。また伝染力が強く、発生すると数鉢が犠牲となる場合が多い。
原因対策 原因菌は不明。ベンレートT水和剤が有効との報告が有った。被害が急速かつ甚大な事から、予防的な薬剤散布と環境の改善に注意する。
有効薬剤 リゾクトニア菌にはリゾレックス水和剤、バリダシン液剤5、モンカット、バシタック水和剤などが有効。疫病菌にはオーソサイド水和剤、ダイホルタン水和剤、キャプタン水和剤など。

シンビジューム腐敗病 フザリウム菌 Fusarium oxysporum
症状 初期、一つのバルブから出た葉がしおれて葉先から枯れ込み、やがてバルブ内部から腐敗しミイラ状になる。多くの場合隣接するバルブに次々と進行し、株全体が枯死する。対病性は品種毎に異なる。
原因 栃木県農業試験場により分離命名された新しい病気で、東洋蘭で言う黒腐病と同一かと思われる。
有効薬剤
 スポルタック、アミスター20、キャプタン水和剤を順に使用する。

苗黒腐病 ピシウム病菌(Pythium spp.)土壌又は水中に生息・発育適温24〜28℃。
症状 黒色の水浸状病斑が急速に拡大し腐敗する。次いでバルブまで腐敗が進行し、被害株は枯死する。バルブが腐敗して押すと水が出る。
原因対策 ピシウム菌は常在のありふれた菌で、比較的高温で多湿な環境下で発生する。
有効薬剤 オーソサイド水和剤80、ダコレート水和剤、キャプタン水和剤など。

ウイルス病(チラ、バイラス)
症状 
葉を透かすと退緑色の不規則な斑点が有ったり褐色斑点が出る。葉が枯れる事は無いが、一度羅病すると完治する事は無い。CYMMV(シンビジウムモザイクウイルス)ORSV(オドントグロッサムリングスポットウイルス)OFV(ラン壊疽斑紋ウイルス)などが知られている。
原因対策 ウイルス感染株の株分けや葉切りした刃物を別の株に使ったり、感染株の鉢底から出た水が別の鉢に入る事によって感染する。今までに色々話題になったが、確実にウイルスフリーになる薬剤は無い。感染株を持ち込まない。退緑色斑の出た株があれば隔離栽培するなど、予防あるのみ。

根腐病 フザリウム菌、フィトフトラ菌 (疫病菌)Phytophthora、リゾクトニア菌 Rhizoctonia solani、ピシウム菌 Pythiumなど
症状 腐敗部分が株元に多く黒変している場合はフザリウム属菌の感染が考えられる。
原因対策 予防のため定期的に薬剤で土壌灌注を行う。根の状態を観察して病原菌によるものか、それとも物理的に多湿な環境のためか見分ける。リゾクトニア属菌の一部は蘭の菌根菌であるが、Rhizoctonia solaniなど数種は多くの植物に苗立枯病などの病原性を持つ。
有効薬剤 オーソサイド水和剤、バシタック水和剤75、リゾレックス水和剤、モンカット水和剤、トップジンM水和剤、ダコニール水和剤、ダコレート水和剤、タチガレン液剤など。

消毒時の注意点 

消毒のポイント 多くの場合、発病してからでは効果が無いので、予防のため定期的に消毒を行う事が必要。薬剤の説明書にある濃度を厳守し、薬害が出ないように気温の高い時期は日没後に行う。毒性の強い薬剤も含まれているので、蘭室の窓は開放し、できればマスクなどを着用する。また、同一の薬剤を多用すると薬剤耐性菌が発生するので、数種類の組成の異なる薬剤を組み合わせる事が望ましい。葉の傷んだ部分を消毒したくなるものだが、多くの病原菌が根から侵入することが確認されているので、株元や土壌の消毒を行う方が効果がある。

根の消毒 根に付着または進入している病原菌や腐敗菌を完全に殺菌する事は困難だが、いい加減な処理のまま植え込みを行うと、次々と健全な部分を侵食し根が無い状態になってしまう。植替え時にはできるだけ不良根を取り除き、菌の侵食を受けて内部が黒変している部分がある場合は、健全な部分まで切り戻す。根が少なく株が固定できないと思われる場合は、中心根だけ残し、肉質の部分を取り除く。ガーデンテープ(ビニール被覆された針金)でバックバルブとビニール被覆された支柱などを利用して作った添え木を鉢土で固定するのも良い方法である。
根の上部だけが不良であり完全に除去できない、または表面だけが黒変している場合は、そのままにし、1〜2時間消毒液に漬け込む。根の内部に浸透することはあまり期待できないので、腐敗部分を紛装するか濃厚液を刷毛で塗装するのが望ましいと思う

B:病気以外の障害 

先枯れ 葉枯れ病と見分けるのが難しいが葉先1〜2cmが枯込む。強風や日照、高温、水分不足などによって、葉先にストレスが掛かる事が原因である。栽培環境を改善すれば止まる。

根腐れ 物理的に多湿な鉢内環境や病原菌の感染、稀にセンチュウの進入などが考えられる。植替え時に腐敗部分の完全切除と根系の消毒などで改善される。同時に鉢や土の選択、作場環境を整えるなどの工夫も必要である。

蒸れ 葉の一部が白く脱色する。新芽の成長が一時的に止まるなどの変調。夏場の高温が原因なので、できるだけ涼しい環境に置き直射日光が当たらない様にする。

霜焼け(霜害) 春先の気温が低い時期に霜が降りそこに直射日光が当たるなどで発生する。被害部分は黒く変色するが病気ではない。

C:害虫

ハダニ 葉に白い粉が付いていたら注意する。葉が白っぽくかすれたようになり、何となく元気が無くなる。高温乾燥時に活動が活発になり繁殖を繰り返す。
防除 アファーム乳剤、マシン油乳剤、マラソン乳剤など。

スリップス(アザミウマ) 寒蘭の花芽が変色変形し開花しない、または花が変形変色している場合はスリップスの被害が考えられる。体長1〜2mm程度の細長い虫で体色は色々である。
防除 オルトラン粒剤、ベストガード粒剤、スプラサイド水和剤など。乳剤を花芽に散布すると花が奇形になる場合がある。

トクナガハモグリバエ 寒蘭の花茎が途中で止まり蕾が黒く変色落下する。花茎に小さな穴が開いている。
防除 ダイシストン粒剤、オルトラン粒剤など。

カイガラムシ 葉の付け根付近に白い粒のようなものが付いている。成長するとロウ質で覆われた紡錘形の貝のような姿になり付着して動かない。ロウ質で覆われているため、退治の難しい害虫である。
防除 スプラサイト乳剤、幼虫はオルトラン水和剤でも効果がある。

センチュウ(ネマトーダ) 1mmに満たない透明なミミズのような形の虫で、根に寄生する。ごく稀に発見する場合があるが発見例は極めて少ない。
防除 ボルテージ粒剤、オキサミル剤など。

ナメクジ 
防除 飲み残しのビールを空き缶に入れて溺死させる。ナメトール、ナメキールなどの誘引剤を使用する。

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